版画については、「幕末浮世絵展」、「北斎と広重展」、「草津本陣と浮世絵」など、過去に多く見学している。 今回は江戸刷り師の本格実演が見られるというので、朝勤務明けに京都へ。 |
平日なので、入りはこの程度。それでも、江戸浮世絵というものは、大きくても大判(B4サイズ?)であり、目の高さに壁にかけた作品を目を凝らして鑑賞するのだから、壁越しにずらりと並んでゆっくりゆっくりと進行するのである。 |
浮世絵の他、肉筆画も展示。スケッチ、妖怪画、北斎漫画など、いつもながらその奇人さに驚く。89歳まで生きれば、当時はまさに妖怪。1999年雑誌『ライフ』の「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に日本人でただ一人、ランクインした。北斎も、150年後、世界の偉人100人の中でただ一人の日本人に選ばれるなんて、思いも及ばないだろうな。北斎はまじめな広重とよく比較され、二人のライバルとしての逸話もおもしろい。 |
アダチ版画研究所から刷りの実演。オリジナルの浮き世絵から版を彫り、刷って商品として販売。当時と全く同じ制作方法であり、技術者養成としても。現在、刷師は退役を含めて80人ほど、技術の後継者にも困る。京都と江戸の刷り師の比較、和紙、版木、馬簾などの話も興味深い。 |
同じ版木で独特のグラデーションを出す技術は刷師によって違うもの。もともと版画作品は、最初に描く絵師、版木に彫る彫り師、紙に刷る刷り師など、分業で行った大量生産の商品である。彫り師も刷り師も非常な技術があったと思うが、実際名を遺しているのは、北斎、広重などの絵師だけということになる。 |
当時は工房内でも腕のある彫り師、刷り師がいたのだろうが、彼らの名前は永久に無名のまま。もちろん北斎など絵師としての力はすばらしいが、線画を描いて、全体的な色とか、グラデーションは完璧には指示していないだろう。このあたりは刷り師のオリジナルな技術だったんだろう。 |
1枚の絵は版木5枚(両面使うので10枚)で構成。元の絵から、色別に分解し、10面のフィルターに分けるのも大きな職人技術だったろう。版木は彫りやすく、耐久性のある「ヤマザクラ」。最高4000枚まで刷れるとか。生産ロットが終わると、版木にはカンナをかけ、また、次の絵を彫ったという。 |
既に消え始めるところ。もう少し早めに着いていて、京都駅ビルの空中回廊にたどりついていたら、もっと鮮明な虹と京都タワーが美しく画面に収まったものを・・・。今日は一眼レフカメラを持って来ていず、広角ができないのが残念。 |