日本人は何度も何度も擦り込まれてきた北斎の「冨嶽三十六景」、広重の「東海道五拾三次」の全作品の本物をまとめて見られる貴重な機会である。 |
原安三郎氏は小さいころ小児麻痺にかかり片手片足それに片目まで不自由の体、それにまっすぐに向き合い、どんなものすごい努力をされたか我々には想像できないが、日本化薬株式会社を興し、日本財界の代表的人物まで上り詰める。氏の集めた大量の浮世絵のうち、北斎、広重の風景画だけに絞った展示。 |
ここに紹介する浮世絵は、日本財界の重鎮としてご活躍された日本化薬株式会社元会長原安三郎氏(1884〜1982)の多年にわたる蒐集によるものです。 今回は、その中から風景画を中心に選りすぐりの逸品を初公開します。 近代ヨーロッパ印象派の著名な画家たちが驚嘆し強い影響を受けたといわれる二大絵師、北斎と広重の揃いものがほぼ完全な姿で遺されていたことです。 この発見は、一人の蒐集家のコレクションとしては、その質と量において、恐らくこれが最後ではないかといわれています。 主な出品作品は、北斎の「冨嶽三十六景」「諸国瀧廻り」「諸国名橋奇覧」や、広重の「東海道五拾三次」「浪花名所図会」「義経一代記」など約240点。なかでも戦後半世紀を過ぎてなおその行方がわからなかった「幻の肉筆画」20点以上が含まれていたことは、これは稀有としか申しようがありません。この肉筆画には、世界的に知られるボストン美術館の旧ビゲローコレクション(昭和8年競売)等も含まれています。 これらの作品を一堂に展観することにより、新たな感銘と反響を呼ぶことと信じています。 |
地元の草津は東海道の宿場の一つだから、街道交流館などで常時、広重の五拾三次浮世絵の一部も閲覧できる。浮世絵の刷りの実演なども以前に経験。当時コピーもグラビア印刷技術も無かったんだから、絵を大量生産するには、原画を描く人だけでなく、木版に彫る人、刷る人がいる。思い切り近づいて絵を凝視すると、彫り師、刷り師の技術もなんとなく分かるような気がする。北斎、広重などの原画がもし存在したら、それはまた違う印象があるのでは無いかと思う。彫り、刷りの工程で省略されたり変更されてしまったところもかなりあると思うからである。そういう意味で、今回、彼らの肉筆画も鑑賞できたのは、大きな成果であった。 |
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