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上演されるのは、赤字のところだけ。
阿波徳島の藩主玉木家のお家騒動で、忠義の家老桜井主繕が悪人小野田郡兵衛のために、主家の重宝国次の名刀を盗まれて困難しますが、藩臣十郎兵衛・お弓夫婦及び藤屋伊佐衛門らのかんなん辛苦によって、悪人から再び名刀を取り返し、主家が再び安泰になるというあらすじの物語です。
十郎兵衛が借金の工面に出た後、お弓独りのところへ飛脚が一通の手紙を届けてきます。
心もどかしく読んで驚くことは、「既に追っ手が迫っている」との仲間からの手紙です。
国を出てから幾年か、刀を取り戻すため、人の家、蔵まで押し入って、捜し続けているのも、みんな主家への忠義のためです。
ところがその目的を果たす前に捕われては、今までの苦心も水の泡となり、盗人の汚名ばかりを残すことになります。
今日演じるところは、お弓が「神仏助け給え」と手を合わせているところへ、かわいい巡礼の詠歌が流れてくるところから始まります。
あまり可憐な少女なので、身の上話等を聞いてみると、この子こそは国許に残したわが娘お鶴です。
預けておいた祖父母が死んだので、両親の行方を尋ね出そうとして巡礼の旅に出ているのでした。
お弓は我が子愛しさ、可愛さに、その場で母と名のって抱きしめたい思いにかられますが、共に暮らすことができない境遇ですから名乗らない方が我が子のためと思い直し、何かといたわりの言葉をかけた後、涙とともに心を鬼にして別れますが、子を思う母の心はうずき、堪えかねて娘の後を追って駆け出すところで終わります。
後の段では、入れ違いに十郎兵衛が巡礼の娘の手をひいて帰ってきます。
娘が小判を持っていると聞き、十郎兵衛はその金を借りようとしますが、怖がった娘が大声を上げて逃げようとしたので慌てて口を塞ぎ、誤って窒息させてしまいます。
そこへお弓が戻ってきて、事情を知り、夫婦は悲嘆の涙にくれます。