映画「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」 2008/01/31



 ティムバートン(Tim Burton)監督は映画界の奇才と呼ばれている。検索してみると、彼の作品はリアルタイムに殆ど映画館で観ていて、スティーブン・スピルバーグやジェームズ・キャメロンらと同様、やはり、その当時、話題になった作品ということが分かる。最近では「チャーリーとチョコレート工場」、「コープスブライド」、「ビッグ・フィッシュ」など非常に印象深い。今回は息の合ったジョニー・デップとまたおもしろい作品に取り組んだ。そして、なんと、ジョニー・デップが歌う「ミュージカル(というほどでもないが)仕立て」なのである。この「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」は日本も含め多くの配役で舞台化されてきた。ミュージカル舞台を映画としてリメイクした映画は、最近では「オペラ座の怪人」、「ヘアスプレー」など。ずばり、ティム・バートン独特の世界、おどろおどろしい独自の雰囲気をかもし出す映画は、かなりの確率で、この映画はティム・バートンだと言い当てる自信がある。サウンドなど、「バットマン」そのもので、大好きな乗りだ。シェークスピアみたいなすれ違いの悲劇は思わず身を乗り出す。トッドがあれほど悪徳判事を恨み、復讐に燃えるかを前半15分ぐらい増やしてでも強調できたらもっとおもしろくなったかも。しかし、かみそりを振り回して吹き飛ぶ血しぶきなど、心臓の弱い方はお気をつけて・・・・。






 「チャーリーとチョコレート工場」の美男子、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のキャプテンジャックなどで見せるジョニー・デップの新たな顔。

某評論から

  ジョニー・デップはやはり大した俳優だ。ソンドハイムの難しい曲を歌いこなしているだけではなく、復讐に凝り固まったスウィーニー・トッドの暗い情念が、歌となって噴出しているのだ。他の出演者もそうだが、彼らは決して歌手のようにきれいに歌っていない。歌声を響かせることより、キャラクターの感情表現を優先させている。このミュージカルではそれが正解。なにしろ、「この死体をどう始末する?」「私に任せて、パイにしてしまうわ」とか、「復讐する日まで、せいぜい(喉を切り裂く)訓練をしよう」なんて物騒な歌なんだから、朗々と歌い上げられても困ってしまう。  それにしてもよくもこれだけダークな映画にしたものだ。色彩を抜き取ったようなモノトーンの画面に死体を焼く真っ黒な煙がたちこめ、愚かなまでに陰気なスウィーニーが客の喉を切り裂き続ける。そのダークな画面に飛び散るのはもちろん真っ赤な血。喉を切ることで抑圧された彼の感情が爆発し、おびただしい量の血が降り注ぐのだ。ティム・バートンはこの感情の爆発=血しぶきをやりたかったんだろうね。R指定の心配もハリウッドの常識も吹っ飛ばして、やりたい放題スプラッター・ホラー・ミュージカルに徹している。その思いっきりの良さが、むしろ痛快だ。(森山京子)(eiga.com)


ティム・バートン監督の主な作品

 チャーリーとチョコレート工場 2005
 ティム・バートンのコープスブライド 2005
 ビッグ・フィッシュ 2003
 PLANET OF THE APES 猿の惑星 2001
 マリオ・バーヴァ 地獄の舞踏 2000
 スリーピー・ホロウ 1999
 ジャイアント・ピーチ 1996
 マーズ・アタック! 1996
 バットマン・フォーエバー 1995
 エド・ウッド 1994
 ナイトメアー・ビフォア・クリスマス 1993
 バットマン リターンズ 1992
 シザーハンズ 1990
 バットマン 1989
 ビートルジュース 1988
 ピーウィーの大冒険 1985


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