ギメ東洋美術館所蔵浮世絵名品展 2007/04/19

大阪市立美術館



 朝勤務明けに大阪に向かう。
 電車内で京都から乗り込んだ、60歳を軽く越えていそうなおば(ぁ)ちゃんが臨席に座る。
 大きなカメラ、プロ仕様の三脚を持参している。
 最近はどこへいっても実年世代がすごい撮影機材を抱えて闊歩している。特に女性(一昔前なら老婆ともいう年頃)が元気。

 「今日はどこを撮影してこられたんですか。」とこちらから声をかけて始まった。
 「仁和寺の御室桜はすでに数日遅かった、ねらって来たんだけどね。」
 桜の名所の話題からカメラの話題へ。「やっぱり写真はフィルムや。富士フィルムが[ベルビア50]を製造中止にすると発表した時、どっさり買い占め冷蔵庫はフィルムでいっぱい」と。
 「デジタルは所詮スナップ、アートはやっぱりフィルムやね。」まあ、おおむね同感。大阪駅で別れるまでいろいろ写真談義に花が咲いた。



久しぶりの天王寺公園。


花文字も美しい。


本日は大阪市立美術館へ、「ギメ東洋美術館所蔵の浮世絵名品展」を。


15時。平日でそれほど多くない。





 本展では、フランス国立ギメ東洋美術館が所蔵する浮世絵コレクションの中から、葛飾北斎、東洲斎写楽、喜多川歌麿、歌川広重など、選りすぐりの名品約190点を紹介します。

  パリの中心部に位置するフランス国立ギメ東洋美術館は、1889年に実業家エミール・ギメ(1836〜1918)により設立されました。1945年には、ルーヴル美術館の東洋美術コレクションが移管され、現在、世界屈指の東洋美術の殿堂として知られています。
浮世絵は、19世紀半ばにヨーロッパにもたらされ、ジャポニズム(日本趣味)と呼ばれる流行の中で、モネやゴッホといった印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。ギメ東洋美術館には、その当時の浮世絵が数多く所蔵され、歴史的にも貴重で充実した内容を誇っています。

これまでまとまって公開されることのなかったギメ東洋美術館の浮世絵が日本に里帰りするまたとない機会です。日本から海を渡りパリの人々の心をつかんだ浮世絵の魅力をぜひともお楽しみください。

◇主な出品絵師
  葛飾北斎(23点)、東洲斎写楽(11点)、喜多川歌麿(19点)、 歌川広重(14点)、
  鈴木春信(7点)、鳥居清長(10点)ほか ※ カッコ内は出品点数

 展覧会は平日に限る。絵巻物展同様、浮世絵展は作品が小さめで、殆どがA4〜A3サイズであり、壁に掛かった作品を接近して鑑賞することになる。休日だったら(壁に貼り付いた)ものすごい一列の行列になり、先へ進まず、じっくり鑑賞できない上、何倍もの時間がかかるだろう。
今の自分の勤務体制が休日に休めないという制限はあるが、逆に、平日に休めること、朝勤務・午後勤務の空きに半日の休みが取れることなど、非常にありがたく思う最近である。
人生の1/3は寝て、1/3は仕事(しかも貴重な日中の明るい時間帯)、そして、残る1/3は余暇(しかし、暗い夜)という普通のサラリーマン時代は、余暇中心と考える上で、なんともったいなかったことか。


北斎 千絵の海 総州銚子

 
写楽 嵐龍蔵の金貸石部金吉     歌麿 絵兄弟(女三の宮)


鳥居清長 風俗東之錦(若侍を連れた武家息女の一行)

 北斎、写楽、歌麿、広重など、それぞれ専用ブースに分けて見ることができる。
歌麿の美人画など、本当に当時の女性はこんな顔だったんだろうか。現代にこんな人が現れたらものすごく違和感。顔はデカイし、目は細い。しかし、どの美人画もこの顔なんだから、当時はこのタイプの顔が美人であり、一般的な女性はだいたいこの顔なんだろう。映画、テレビの時代劇の女性は現代の女優がカツラ、着物を着たもので、実際に昔の日本へ行った時は全く違うイメージとなる。それだけ日本人は変化したとしたら、ダーウィンも真っ青?。伊東美咲や松嶋奈々子などがタイムスリップしたとしたら、彼女たちはどのような運命を生きるか?。ふふふふ。
美人画浮世絵は今のアイドル写真集。写真も印刷も無いから、肉筆画を彫って刷るのだ。



 もう一つの今回の見所は、「世界初公開!北斎の龍虎100年ぶりに出会う」である。
このエピソードがなんとも劇的で、テレビで紹介された時、これは絶対見ておかねばと本展鑑賞の動機になったものである。
太田記念美術館所蔵の北斎の「雨中の虎」はいったい、何をにらんでいるのかが、長い間の解けない謎だった。2005年、太田記念美術館の館長がフランスの美術館の展示で北斎の「龍図」を見た時、愕然とする。
表装、サイズ、北斎のサインが見覚えの「雨中の虎」と全く同じであり、初めて「龍図」と「雨中の虎」が対幅(ペア)であるという大発見が世界を驚かせた。ここに、今、「龍図」が100年ぶりに日本へ里帰りし、生まれ地の日本で相手の虎と対面している。再び、日本とフランスに別れ別れになるまで。北斎没年90歳の作品。
ところで、この虎も、実物の虎とはかなり趣が違う。デフォルメかと思うようなマンガチックである。龍も架空の動物であるが、龍は一般的によく知られたデザインである。円山応挙などの虎もどことなくかわいいイメージである。なぜか。日本の当時の画家は「虎」という動物を見たことが無いのである。写真も無いし、彼らにとっては「虎」は龍と同じように、海外の画家の描いた絵によってイメージを教わるしか無かったからだという。

虎の視線は確かに龍の目に。
左:葛飾北斎「虎図(雨中の虎)」太田記念美術館蔵  右:葛飾北斎「龍図」ギメ東洋美術館蔵


いつものように、ミュージアムショップは大にぎわい。


これをペアで買っていく人もいるんだろうな。並べて飾る。


浮世絵グッズも多い。


公園の花もこれから、カラフルに。


16時過ぎ、まだまだ明るい。


 帰りに、地下鉄「長堀橋」のペンタックス社に寄る。カメラK100DのCCDの埃掃除を頼む。「ものすごい埃でした」。CCDの埃はデジタル一眼カメラの宿命。この写真の後はもう少しきれいに写る(カナ?)
ついでに、いろいろ、まだまだ知らないK100Dの使い方について親切に教えてもらう。かなりテクニックが分かった。
ペンタックスは今、HOYA社に統合(吸収)されるか瀬戸際にいる。あの天下のカメラの名門がなぜ、HOYAなんかに?。HOYA主導になってしまったら、カメラ部門の方針も自由にとはいかず、得意の独創的カメラ、優れたレンズなどの開発が・・・・?。まさか、ミノルタやコニカのような運命をたどることにならなければいいが・・・・・。「ペンタックスさん、がんばってくださいね」というしかない・・・・

 ところで、フランスといえば、あと3日にせまった大統領選挙。ものすごく興味ある。厚い労働者優遇の法律でヨーロッパでは経済的に大きく立ち遅れたフランス。ひとたび雇用すれば首を切れないとか、厳正な労働時間などなど。全企業の働き手が日本の公務員みたいになって、中にはちゃんと働かない連中も多いとか。夕方6時になれば、殆どのサラリーマンは既に自宅に帰って家族だんらん。これを良しとするか、経済発展のブレーキとするか。アメリカ型の経済政策に戻すとする男性候補。現行の福祉政策を守るとする女性候補。女性のフランス大統領誕生か?。日本の統一選挙は知事、県議が終わり、市議へとなってきたが、よほど、このフランス大統領選挙の方が興味がある。。


つれづれぐさページへ戻ります。



2007年のつれづれぐさへ