映画「ブーリン家の姉妹」 2009/01/08



 昨年も多くの映画を観た。ハリウッドの超大作もいいが、やっぱり、邦画の秀逸さに感心することが多い。日航機の墜落にかかわる報道マンの葛藤を描いた「クライマーズハイ」とか「ハッピーフライト」、「ぐるりのこと」、「あるいてもあるいても」、「おくりびと」など、枚挙にいとまがない。洋画では「レッド・クリフPart1」には少しがっかりでPart2に期待、「テラビシアにかける橋」、「つぐない」、「ブラインドネス」、「ノーカントリー」などは印象に残った。



 意外にメジャーな映画館にかからないのはその内容からか、この「ブーリン家の姉妹」はなかなかすごい映画である。
 現在エリザベス女王が君臨するイギリスの王室の歴史は殆ど知らないのであるが、この映画で、昔の英国王室がよく分かる。ヘンリー八世と正妻(亡くなった兄の妻)との間に女児しかできず、イギリスでは男系しか王位継承ができないため、王は悩む。まさに、イギリス版大奥で、王の寵愛を受けて、男児を生むことが使命として王室に差し出されたブーリン家の姉妹2人のドロドロした闘いを描く。子供を産む側室役どころか、策略で王位までつかんだ、アンは最後は斬首で処刑される。
 映画的な脚色はあろうが、結果として史実に合っているから、この500年前のイギリスがローマから宗教的独立を果たし、偉大な大英帝国になった物語は理解しやすい。危惧していた女系王位継承がエリザベス一世から現在も続いていることは皮肉でもある。興味深い歴史の一こまである。



解説:
16世紀のイギリスの宮廷を舞台に繰り広げられる愛憎劇。どちらも国王の寵愛を受けながら、まったく異なる道を歩むことになる美しい姉妹の劇的な人生を鮮やかに映し出す。本作ではナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンという当代きっての若手女優の夢のような共演が実現。その兄役を『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェスが好演する。後にイギリスに黄金時代をもたらしたエリザベス1世の母の壮絶な生涯に息をのむ。(シネマトゥデイ)




あらすじ:
16世紀、イングランド国王ヘンリー8世(エリック・バナ)には男子の世継ぎがなかった。いら立つヘンリーが愛人を求めていることを知った、野心家のブーリン卿(マーク・ライアンス)は聡明な長女のアン(ナタリー・ポートマン)を愛人候補に仕立てる。だが王が目に留めたのは、結婚したばかりの気だての良い次女メアリー(スカーレット・ヨハンソン)だった。(シネマトゥデイ)



 皮肉な運命を受け入れて王の愛人になった従順な妹と、王妃の座にこだわった野心家の姉。ヘンリー8世をめぐる正反対の姉妹の物語は、売れっこ女優の競演が大正解。英国王室におけるブーリン姉妹の行く末はいわゆる悲劇なはずだが、重苦しい気分にさせるどころか、高揚感すら与えるのは、2人の女性がどちらも強さを感じさせる存在だから。妹メアリーの芯の強さもさることながら、結婚が出世の道具だった時代に、自分がたんなる道具で終わることをよしとせず積極的に人生を切り開こうとした姉アンのしたたかさは、現代女性の共感を誘う存在だ。 それにしても、ナタリー・ポートマンもスカーレット・ヨハンソンもハマり役。美貌の優等生女優でありながら、女としての色気がないナタリー。地味な子役だったはずがいつのまにか大物監督のミューズやファッションセレブとしてひっぱりだこになっていた不思議な色気の持ち主のスカーレット。彼女たちのバックグラウンドが、一族の期待を背負いながら最初は王の心を捕らえられなかった姉と、人妻でありながら王の関心を得た妹という2人の対比と愛憎に、より陰影を与えることに。同世代に競い合うべき2人の素晴らしいスター女優がいたことに感謝。(杉谷伸子)(eiga.com)



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