京都映画祭 2004/09/21-25



「京都映画祭」が、9/19〜9/26の期間行われた。
第4回の今年はチャンバラ映画」がテーマで、期間中、35本の昔の映画が上映され、
ゲストトークやシンポジウムなど、多くの催しがあった。

期間中、勤務の関係もあり、4回参加、合計15の映画・イベントに参加することができた。
どれも初めてのタイトルで、現在は映画ざんまいながら、昔はそれほど映画に狂っていたわけでもないんだなと思った。お金も無かったしね。

 

写真、概要説明は、実行委員会事務局のホームページから引用した。
http://www.kyoto-filmfes.jp/



9/21


@「きさらぎ無双剣」 1962年 東映京都 カラー〈93分〉 ニュープリント 監督:佐々木康
  出演:市川右太衛門、松方弘樹、高田浩吉、近衛十四郎、里見浩太朗、東千代の介
  概要:五味康祐の剣豪小説を原作に、オールスターが賑やかに華やかにチャンバラ活
      劇を繰り広げる。
      将軍吉宗の謀殺を狙う大陰謀団の動きに、紀州と尾州の対立が深まるなか、剣
      豪、義賊、名奉行、美女、妖婦が入り乱れて争う。
      御大・市川右太衛門と近衛十四郎の何度もの対決が見もの。

 若い松方弘樹は本当に美男。今の韓国映画のスタァは美男ぞろいでモテモテであるが、
現在の日本にも美男はいるハズ。
 しかし、現在の日本の映画スタァというのは、織田祐二とか、とても美男とはいえないクセ
のある顔を使っているだけなんだと思う。
 大川恵子って女優もいたなあ。


A「十三人の刺客」1963年 東映京都モノクロ〈125分〉 監督:工藤栄一
  出演:片岡千恵蔵、嵐寛壽郎、西村晃、内田良平、里見浩太朗
  概要:東映の主流が時代劇から任侠映画へ移る途中に生まれた集団時代劇の代表作。
      将軍の弟で明石藩主の暴君を抹殺するべく、13人の刺客がある宿場を迷路に仕
      立て、明石藩一行を誘い込む。ラスト10数分の大殺陣は、かつての時代劇スター
      の共演とリアリズムの迫力で比類ない。

 片岡知恵蔵などは従来は1人主役を張っていたが、映画の斜陽などで集団時代劇への方針
に移りつつあった時代。
 これはすごい。モノクロ映像で、ものすごい迫力。黒沢明作品でなくても、こんなすごい映画が
あったのか。
 理不尽、忠義、武士の道・・・・


B「座頭市血煙り街道」1967年 大映京都カラー〈86分〉 監督:三隅研次
  出演:勝新太郎、近衛十四郎、高田美和、朝丘雪路、伊藤孝雄、中尾ミエ
  概要:勝新座頭市のシリーズ第17作。座頭市が宿屋で死んだ女の頼みで息子を父親のもとへ
      連れていくはめになったことから、悪代官、禁制の絵を描いた絵師、公儀隠密の絡む争い
      に巻き込まれる。
      剣豪スター近衛十四郎の隠密と、座頭市との4分17秒に及ぶ凄まじい殺陣は必見。

 やっぱり、座頭市は勝新太郎だ。
 北野武の座頭市なんて・・・。
 これこそ、海外映画祭で賞をとれるシリーズ。近衛十四郎の殺陣はやっぱりスゴイ。



C「子連れ狼地獄へ行くぞ!大五郎」1974年 勝プロカラー〈84分〉 監督:黒田義之
  出演:若山富三郎、富川昌宏、木村功、大木実、瞳順子、石橋蓮司
  概要:人気シリーズの第6作で、監督は「大魔神」などの特撮を手掛けた黒田義之。
      復讐の旅を続ける拝一刀の前に、宿敵柳生烈堂の一人娘の香織が秘術「お手玉の剣」
      を持って立ちはだかる。大雪原で一刀親子が大軍団に襲われるラストの凄絶な死闘が
      特撮技術を生かして迫力満点。

 大雪原を血に染めるスゴイ斬り合い。
 タランティーノのキルビルにも影響を与えたという、胴切断なとのスプラッター!!!。
 エネルギー満点。


D「ゲストトーク」出演:平田満
  この次に上映される「蒲田行進曲」に主演した平田満さんがゲストとして登場。
  階段落ちの話など、おとなしく、ひかえめな氏の話が聞けた。



E「蒲田行進曲」1982年 松竹、角川春樹事務所カラー〈109分〉 監督:深作欣二
  出演:風間杜夫、松坂慶子、平田満、原田大二郎、蟹江敬三
  概要:映画づくりの現場を舞台にした人間喜劇で、東映京都撮影所で撮影された。
      スター銀四郎とその子を宿した女優小夏、小夏を押し付けられる大部屋俳優のヤス、
      3人の奇妙な人間関係を描く。新選組の池田屋襲撃が劇中劇で、決死のスタントに
      挑むヤスの階段落ちがクライマックスに。
 当時、ほとんどの映画賞を総なめにした、邦画の一大傑作。実は、この映画は私は観てい
なかった。おもしろい。
 観たあと、幸せな気分にしてくれる。松阪慶子が実にかわいくて美しい。
 冷たい印象の「女優」の彼女と、お弁当を持ってヤスに会いに行く「普通の奥さん」の彼女は、
変化が非常に大きく、松坂慶子の名演技が光っている。
「居酒屋ゆうれい」での山口智子のかわいさに共通するところあり。
 主演のヤスに扮した平田満は’82日本アカデミー最優秀主演男優賞他受賞というだけあって、
すばらしい。さきほど舞台で見た本人のおとなしく謙虚な印象と全く正反対の役柄・演技で、役者
というものは、演技で化けるものだと思った。
 ともあれ、この映画は、とにかくすばらしかった。



9/22


@「幕末残酷物語」1964年 東映京都 モノクロ〈99分〉 監督:加藤泰
  出演:大川橋蔵、河原崎長一郎、藤純子、西村晃、内田良平、大友柳太朗
  概要:武闘派新選組の過酷さを描く集団時代劇の傑作。
      気の弱い新入隊士・江波三郎が、厳しい規律のもとに人間性を失っていく。
      壬生屯所内に限定した描写が組織の非情さを浮かび上がらせるなか、復讐が
      目的の江波と河原崎長一郎の沖田総司の心の交流、幼さを残す藤純子が印象的。

 新選組の屯所内の厳しさ、戒律破りに対して土方歳三(西村)が次々に切腹を強要していく中、山南(大友)が殺害され、新撰組内は次第に暴力団化。大川橋蔵のノーメイク出演作はめずらしい。
 新撰組屯所内を描いた映画は「御法度」、「壬生義士伝」などもあるが、どれも非情な組織を描く。



A「忍者武芸帖百地三太夫」1980年 東映京都カラー〈117分〉 監督:鈴木則文
 出演:真田広之、千葉真一、蜷川有紀、佐藤允、志穂美悦子、丹波哲郎
 概要:千葉真一率いるJACKの若いメンバー真田広之が鍛えた肉体のアクションを
     たっぷり見せる忍者時代劇。
     百地三太夫の遺児・鷹丸が中国から帰国し、かつての仲間と父の仇討に向かう。
     天守閣からのダイビングなど、息を飲む場面の連続が素晴らしい。
     アクション監督は千葉真一。

 アクションのヤマ場を作るためのわざとらしさ、無意味なシーンが多い。
 突然衣装が変わるなど、ハチャメチャ。駄作。見なきゃよかった。



B「木枯し紋次郎関わりござんせん」1972年 東映京都 カラー〈90分〉 ニュープリント 監督:中島貞夫
 出演:菅原文太、市原悦子、田中邦衛、大木実、汐路章、志賀勝
 概要:笹沢左保の股旅小説の映画化で、TVでは中村敦夫の当り役だった紋次郎を菅原文太が演じる第2作。
     流れ旅を続ける紋次郎が、赤子の時に間引きから救ってくれた姉に再会する。女郎に身を落した姉を案
     じる弟、その想いを利用する姉。運命の哀しさに紋次郎の怒りが弾ける。

 菅原文太のスマートさ、力のある殺陣がいい。
 ストーリーは悲劇、悲劇で、悲しい。



9/23


@「丹下左膳餘話百萬兩の壷」1935年 日活京都 モノクロ〈92分〉 監督:山中貞雄
 出演 : 大河内傳次郎、喜代三、宗春太郎、沢村国太郎、花井蘭子、深水藤子
 概要:29歳の若さで戦病死した山中貞雄の現存3作品のうちの1本。
     柳生家の存亡にかかわるこけ猿の壷の争奪戦を描くなか、それまでのニヒルな
     丹下左膳像を一変した。
     左膳と矢場の女将お藤がみなし児のちょび安をめぐって、親バカぶりを競うなど、
     随所にあふれるユーモアが楽しい。
 
 山中貞夫監督の作品は25作あるそうだが、残っているのは3作らしい。そのうちの1作。剣劇部分は紛失しているため、この丹下左膳ではチャンバラは少なく、人情喜劇としての印象が濃い。新発見された20秒のシーンも今回特別上映された。客席からはあちこちで笑いが出るほど、うまい作りとなっている。本作のリメイクの最新作が豊川悦司、和久井映見で封切られている。



A「からくり蝶」1929年 東亜京都 モノクロ サイレント〈119分〉 監督:後藤岱山
 出演:嵐寛壽郎、原駒子、羅門光三郎、市川花紅、小島一代、片岡左衛門
 概要:剣豪スター嵐寛壽郎の初期傑作。
     旗本・月影鉄馬は喧嘩がもとで入獄し、その間に許婚は小堀仙八郎に嫁ぐ。
     無頼の生活を送る鉄馬は女伊達のお仙と出会うが、お仙に横恋慕の仙八郎に
     よって、冤罪を着せられ
     ようとする。この主筋に怪盗の出没が絡み、波瀾万丈のチャンバラ活劇へ。
 サイレント映画。数人の生演奏と弁士による活弁は初めて見た。
 弁士は見事な語りで、まだ、こういうことのできる人がいるんだ。
 まあ、講談や浪曲と思えばいいが、映画上映中のこと、暗い会場で原稿にスポットライトをあてて読むのも大変。演奏も同じで、どこのタイミングで演奏を開始するかなど、結構難しいと思う。
 75年前の映画なんだ!。この当時はフィルムは可燃性でいろいろ苦労があったろう。画面は雨がザアザア降っているが、演じている役者はイキイキとしている。
 チャップリンの映画のように、毎回セリフが看板で入る。そこを弁士が読むわけだ。役者は歌舞伎のように厚化粧。



9/24

@「丹下左膳」1952年 松竹京都 モノクロ〈89分〉 監督:松田定次
 出演:阪東妻三郎、淡島千景、かつら五郎、大友柳太朗、三井弘次、高田浩吉
 概要:時代劇スター阪東妻三郎の最後から2本目の主演作で、大河内傳次郎の当り役・丹下左
     膳を痛快に演じる。
     柳生家の埋蔵金の隠し場所を秘めたこけ猿の壷をめぐって、左膳、柳生源三郎、幕府隠
     密、司馬道場を狙う剣客などが争奪戦を繰り広げ、ちょび安を巡る情愛が流れる。

 今回の上映映画のうち、丹下左膳ものは4本ある。
 どれも、テーマ、登場人物は同じで、こけ猿の壺、左膳、源三郎、お藤、チョビ安である。
 チョビ安は実はご落胤で、最後にどうするかが各作の特長でもある?
 左手だけで殺陣というのは大変だろう。
 大友柳太朗は左膳の敵役。


A「丹下左膳 決定版」 1958年 東映京都   カラー〈99分〉 ニュープリント 監督:松田定次
 出演:大友柳太朗、大川橋蔵、美空ひばり、松島トモ子、長谷川裕見子、大河内傳次郎
 概要:大友柳太朗が丹下左膳を明るく豪快に演じて、ニヒルな怪人像を一変させる。
     百万両の秘密を封じ込んだこけ猿の壷をめぐって、柳生源三郎、左膳、大岡越前守が
     争奪戦を展開。
     オールスターの顔ぶれが華やかで、左膳スターの大御所・大河内傳次郎も客演。
     正式題名は「丹下左膳」。

 本作は比較的新しい。東映がシネマスコープを始めて1周年記念作。最初に、ダァーっと、総天然色シネマスコープの文字が横長に大きく出る。
 豪華なキャスト。大川橋蔵の柳生源三郎に美空ひばり、松嶋トモ子など。今まで、丹下左膳の当たり役だった大河内傳次郎が別の役で出るなど。
 それにしても、東千代の介って、将軍様や殿様ばかりだったなぁ。
 桜町弘子って女優も懐かしくみた。
 前の作品で左膳の敵役だったのに、ここでは左膳。



B「十兵衛暗殺剣」 1964年 東映京都 モノクロ〈85分〉 ニュープリント  監督:倉田準二
 出演:近衛十四郎、大友柳太朗、宗方奈美、河原崎長一郎、林眞一郎、香川良介
 概要:近衛十四郎の柳生十兵衛シリーズの第9作。新陰流正統を主張して柳生新陰
     流に挑む剣客の反逆と、それに対する十兵衛の受け身の闘いを描く。
     湖上に出没して柳生勢に襲いかかる湖賊、大友柳太朗の気迫、ラスト、大友・近衛の
     二大剣豪スタ―の長い一騎討ちなど、見どころは多い。

滋賀県琵琶湖の竹生島が舞台。モノクロ画面ならではのすばらしい迫力ある斬り合い。



Cゲストトーク 出演:山内鉄也/目黒祐樹
 「忍者狩り」の監督山内鉄也氏と、俳優目黒祐樹氏の対談。目黒祐樹氏は、近衛十四郎を父、松方弘樹を兄に持つが、母も舞台俳優。近衛十四郎は座員50名を連れて、全国芝居巡業をしたという苦労人。近衛十四郎が戦争に行きシベリアから帰るまでの3年間、母が一座を維持していたと言う。
映画俳優として復帰するも、アメリカGHQの方針で時代劇は禁止とされ、映画会社は、現代劇へと方針を変更していく。片岡知恵蔵の多羅尾伴内、市川右太衛門のマドロスシリーズなど、スタァが現代劇へ流れて行く中、近衛十四郎はあくまで、時代劇にこだわり実演(当時芝居をこう言った?)を続ける。映画に比べて、芝居はまだ、時代劇に甘かったらしい。
 結局、10年ほどの映画界にごぶさたした近衛十四郎は再び、時代劇映画に登場する。
 竹光の剣をいかに重く見せるか、他の役者よりもかなり長い自分の剣をいかにうまくさばき、腰からうまく抜くかなど、近衛十四郎の不断の努力は非常に興味ある話を聞いた。
 「忍者狩り」は当時の会社方針に対して、斬新な新しい時代劇を作ろうと撮影所の若者が集まって制作した低予算映画という。
 目黒祐樹って、やはり、父に似ている。近衛十四郎の剣豪役者円熟期は50歳からという。もう一度目黒祐樹で見られないものか。


D「忍者狩り」 1964年 東映京都 モノクロ〈87分〉 ニュープリント  監督:山内鉄也
 出演:近衛十四郎、河原崎長一郎、山城新伍、佐藤慶、天津敏、田村高廣
 概要:集団時代劇の傑作。外様大名取り潰しを狙う幕府の命を受けて暗躍する隠密と、
     忍者狩りに雇われた浪人たちとの凄惨な攻防戦を描く。松山藩に忍び込んだ闇の
     蔵人と一味、迎え討つは幕府の謀略で主家を失った浪人4人。モノクロ画面を生か
     した闘いの迫力が手に汗を握らせる。

これもモノクロの良さが出ている。安土城、彦根城、大阪城、姫路城など、影を生かしたおもしろい映画。 お家のためなら、何人死んでもしょうがない。



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